Call of Cthulhu

イブキのノート
  • 花冷えに亡く季節
  • 琴蕗 イブキ

イブキが勝手に書いてた日記の転載
自分用に
※「みんなのこと」含めて、火曜日の夜から書き始めてる
※勘違いも含めて日記なので特に注釈はしない

みんなのこと———-

・ケイトとニコ
ケイトは16、ニコは17。
ケイトは目が見えないので、ニコに身の回りの補助をしてもらっているようだ。
ニコは世話焼きで彼女以外にも、中庭の手入れやメイドたちの家事手伝いなどを率先してやっている。
二人とも屋敷に来て長い。ケイトが一番長くて8年、その次にニコが7年。
ニコはネネムという昔いた子の話もしてくれた。水底の宝石箱の画廊の絵は、彼が描いたもの。
マリととても仲が良かったそうだ。

お祈りする際の言葉の意味を訪ねた時の理由が気になる。
ニコは「神様は自殺をすることを良しとしないでしょう?だから、普遍的なものに対して祈るようになった」と言っていた。
→自分の死を選ぶことを許容してくれる存在である普遍的なものに対して祈っている?
永遠なるもの・とこしえなるもの
風、星、花、光…といったもの。

ケイトは天気のいい日にニコの淹れてくれる紅茶を嗜むのが日課。
私が淹れたものも美味しそうに味わってくれて嬉しかった。
昔、ここを出ていった友達に便りを出したが、返ってこないと言っていた。
出て行った人はどうなったか、大人は教えてくれない。

・マリ
とても頭がいい。チェスのやり方を教えてくれたし、タロット占いもしてもらった。知的探求心旺盛な人。
私の症状と同じ様な人をおとぎ話の本の登場人物で見たことがあると言っていた。この図書室で読んだのは間違いないと言う。
タイトルは思い出せないようだった。探してみると言ってくれたが、ここから見つけ出すのはとても大変そうだと思った。
夢を見る病気だと言っていたが、どんな病気なのかさっぱりわからない。
タロット占いの結果
イブキ
《隠者:逆》《星》《月》
過去/現在/未来
閉鎖的/希望/不安・移ろい
リゼ
《太陽》《戦車》《運命:逆》
過去/現在/未来
喜び/強い意志/すれ違い

(カードの意味はともかく、太陽と月が真反対の印象で、おもしろかった)

水曜日に18歳になる。
手術を受けることにあんまり前向きじゃないように見える。
彼女は「人を殺したことがある」と言っていた。とてもそんな風には見えない。
「誰もが病気だって言うけれど。本当はちっともそんなことないの。私たちにとっての普通を、他の人が普通と認めてくれないだけ」
「本当は病気のままでもいいの」
「病気の私が、私だから」

病気だから、手術を受けられるようになるまではここで過ごしてと、大人にそうしたほうがいいと言われてここに来ただけの自分にとっては、意志の強い彼女の言葉が重たく感じる。
治療を受けられるなら早い方がいいとは思っていたが、ここの環境はあたたかくて、離れがたい。もしかしたらマリもそうなのだろうか。

・リィとペネロペ
かくれんぼをしているときに出会った。
リィはリゼにどんぐりをぶつけた。痛そうだった。
悪い事をしているのを見るのが好きじゃないから、リゼには仕返しは良くないと言った。
今思えば彼女の鬱憤を晴らす術を絶ってしまったのかもしれない。でも見たくないから…。
また自分本位に動いてしまった…。
リィに花をじっと見られていたのはやっぱり気分が良くなかったけど、精一杯愛想がよく見えるような返事を返したつもりではある。どうだったろうか。
あの子は誰に対してもつっけんどんな性格なようなので、悪い子ではなさそう。シャイなのかな?
14で、ここに来てから2週間。手術に対しては理解がある。そのためにここに来たとも言っていた。なんの病気なんだろう。

ペネロペは、双子。二人でペネロペと自己紹介された。お部屋も二人で一部屋使っているようだ。とてもちいさくてかわいらしい。かくれるのが得意。
18歳になった時の手術に関しては、怖がっているようだ。不安そうに俯いていた。
でも実際に彼女らの症状についてはよくわからない。

・リゼ
とても明るい、元気なルームメイト。私とは正反対の子。
記憶喪失が病状だと言っていた。でもそのことを嘆いてる様子は、あんまりない。
→記憶喪失である事すらもいつの間にか忘れてしまっている?今まで何度も説明されていた、らしいとは本人談。
リゼの声は暖かくなる。けれど、本当にそう思って言っているのかどうかがわからない。私が今まで人を疑いすぎて生きてきたからかもしれない。
本当に思って言ってくれているのだとしたら、私には勿体なくて、嬉しい言葉ばかりで、信じ切ってしまうと、そうじゃなかった時にどうすればいいのかわからなくなる。
彼女はこの花を綺麗でかわいいから、役に立たなくてもあるだけでいいと言ってくれるけど
いつか自分でもそう思える日が来るのだろうか?

火曜日の朝、陽だまりのなかに居る彼女はそれが当たり前のように見えた。
太陽はリゼを照らしている方が相応しいと思う。
二日目の彼女はまだ記憶が残っているようだ。昨日の事もちゃんと覚えていた。
たくさんのことが記せるように分厚い日記をマリに貰っていた。これから毎日つけるのだという。いつ、どれだけの記憶が彼女からなくなってしまうのか、私にはまだわからない。

屋敷に来てから見つけた木箱や、火曜日の朝に持っていた花の小瓶を今は持っている。
あと前から小石や野花や、リィにぶつけられたどんぐりも鞄にしまっているようだった。
収集癖がある?

食べ物は、シチューが好き。

火曜日===============

朝、リゼのポケットの中に花の入った小瓶が入っていたそうだ。誰がくれたんだろう?

みんなとマリのためにケーキを作った。
みんな楽しそうでよかった。
紅茶が上手く淹れられなかったけど、物知りなニコはクッキーやゼリーにすることもできると教えてくれた。明日朝早くに出て行くマリへの贈り物として、クッキーを焼いた。
ケーキのお供の紅茶はニコが淹れてくれて、ケーキも紅茶もとてもおいしかった。
ケーキは偶数に等分したので、みんなのほかにメイドさんの分も切り分けた。
渡しに行くとメイドさんは驚いた後ぺこりとお辞儀をした。
私たちの行動に拍子抜けした様子だった。
彼女の声を聴いたことはまだない。

夕食の後にはケイトのピアノ伴奏でダンスをした。初めてだったけど、リゼのほうがもっと落ち着きがなくて面白かった。目をつむって踊るなんて、初体験の上に重ねてチャレンジャーだ。
ケイトはリゼにピアノを教えてくれるという。今はまだ自信がなさそうなリゼだけど、きっと好奇心旺盛な彼女なら上手に演奏できるようになるだろう。上達した彼女の演奏を聴くのが楽しみ。

水曜日===========================

夜中、何かの音と窓から漏れる光が目に入って目が覚めた。
4つの光が中庭を進んでいた。

気になるが一人では怖いのでリゼを起こして見にいこうとしたら、リビングホールにいつも給仕をしてくれる黒いベールのメイドさんが立っていた。
異様な雰囲気がして怖かった。ケーキを渡した時の空気とはまるでうって変わって別人のようだった。
リゼは怖いもの知らずなのか彼女に真正面から外へ出る許可を貰いに行っていた。私は怖くてずっとリゼの後ろにいた。
メイドさんの横を通り抜けようとしたリゼが彼女にぶつかりベールが落ちた時に信じられないものを見た。
彼女には顔がなかった。リゼが倒れるところを見た。

目が覚めたら自室のベッドに居た。
天気が悪くて身体が怠かった。
リゼも夜中のことを覚えていたから夢じゃ無いと思う。
私が起こさなかったらあんな怖い思いをさせずに済んだのに。
でも、彼女はメイドさんにぶつかったことを気にしていた。
謝りたいのだと言う。びっくりしたけど、優しい子なんだと思った。

【マリ】

朝の出来事は目まぐるしかった。
朝早くに出ていくと言っていたマリは既にその場には居ない。
リィは彼女の名前を呼び、部屋に帰ってこなかったと怒って、中庭に飛び出してしまった。
リィ以外の子供たちは何か事情を知っているようだったけど何も言ってくれなかった、ケイトだけは水底の宝石箱のことを私たちに告げた。
早くしないとマリは大人たちに連れていかれると言う。

水底の宝石箱の奥の画廊にリィと、マリの横たわる身体があった。
彼女は幸せそうに眠っていた。花冠と、花束を手向けられて、ひらひらの服を着て、綺麗だった。
「生きててほしかった」とリィは泣いていた。
泣いている子を目の前にして、私は何にも言葉が出てこなかった。
ただ昨日受け取ってくれた贈り物の残骸を見ていることしかできなかった。

リゼはリィのとなりで、ずっと慰めてあげていた。
誰かの心に寄り添える言葉をいくつも持ち合わせている。自然とそんなことができるリゼは本当にすごいと思う。
マリがいなくて悲しいし、ずるいと言った。
幸せになって私たちのことを置いていったマリのことを少しだけ責めていたけど
幸せになれてよかったのかなとも零していた。

(ここで、画廊に飾られていたマリがモデルの絵が変わっているのに気づいた)

マリを部屋に運ぶときに彼女に触れることができたのが、ますます彼女が生きていないことを私に実感させて、嫌だった。冷たい。
お昼はリゼが目玉焼きトーストを作ってくれた。
リィはマリと一緒に部屋に閉じこもってしまった。そのあと晩御飯の時に一目見かけてからずっと、彼を見ていない。
二人の部屋の前に夜食とクッキーと、紅茶を置いておきたかったけれど、溢してしまった…。
部屋から出てきてくれたら謝りたい。

【ケイト】

ケイトに儀式の話を聞きたくて部屋を訪問すると、不在だった。
部屋の中には綺麗な結晶を入れたケースがいくつも飾られていた。
後から部屋に帰ってきたケイトが、これはニコの涙だと教えてくれた。彼の病状はそういうものらしい。
すぐに音を立てて壊れてしまうもの。
これのせいでニコは心を痛めることが多いと聞いたのは、なんとなく私も共感できる。
常識と違う人間だから、知らないものだから、みんな恐いのだと思う。

マリは永遠になった。風や星や花や光、とこしえなるもの。夢の世界に旅立っていった。
夢の中でならマリと会える。マリの身体はもうなくても、声が聞けなくても、まわりのかわらないものになったマリはいつでも傍にいる。
彼女は約束をふいにしたわけではないのだ。
いろんなことを彼女から学んだ気がする。

ネネムが描いた人は必ず死ぬから、いつも風景画を描いていた。
本当は人を描くのが好きだったという。
ネネムの魂の記憶は絵の中に在って、今も絵を描いている。
生きていたころのネネムは、マリが夢の世界に連れて行った。
彼女は人を殺したことがあると言っていた。このことがそう?

・水底の宝石箱には大人には秘密の部屋があるという。
・ケイトが来てからの8年のうち、今の先生は4人目。

【図書室の話】

図書室にネネムが描いた絵本が置いてあった。こどもの楽園の話。
白紙のページに彼からのメッセージが浮かび上がってきて、すぐに消えてしまった。不思議だ。
図書室には、マリが探してくれていた、私と似ているおとぎばなしの登場人物の本もあった。
物語の女の子は吸血鬼だった。リゼに心配されたけど私は人間…だよね?

【ロージー】
メイドさんは過去にここに入院していた子供だった。
治療を受けたあと、大人に顔をとられて帰ってきたそうだ。
彼女は永遠にはならなかったけれど、ここにいる子供たちを守るためにいる。
大切に思っている、と、答えてくれた。

【リゼ】
リゼは、私よりずっと昔からこのサナトリウムに入院していた。
1年半くらいずっと、月曜日から日曜日までを過ごして、2度目の月曜日になったら記憶が失われて、新しいリゼになる。
彼女の記憶をとどめるための魔術をここの子供たちが生み出して、それを使っていたとも言っていたけど
事故が起こって、今いる皆もリゼのことを忘れてしまった、らしい。
昔からいるはずのリゼのことを私と同じように初対面として接してくる皆に対して、
最初はリゼを騙していたのかと思って悲しくなったけど、事故でそうなってしまったのだと聞いて、悪いとは思ったが安心してしまった。
みんな、彼女の記憶がなくなってしまうことを嘆いて、そんなすごい魔術をつくった。
彼女は、みんなにとても愛されている。彼女もみんなのことが大好きだから、その分だけ愛を返されている。

私は記憶がなくなっても平気だ、という彼女に「置いて行かれているみたいで嫌だ」と言った。
そんなつもりはないってリゼは言うけど
そうやって前だけ向ける、後ろを振り返らないまっすぐなところが、過去の綺麗な思い出に縋って生きてる私にとっては、全然追いつけないくらい前を進んでいる人に見える。
「綺麗だ」って言ってくれたリゼも、過去のものになる。新しいリゼには必要のないもの。
新しいリゼはまた何度でも言ってくれるのかもしれないけど。
ぽかぽかした気持ちにさせてくれたリゼは、あの時のリゼなのになって、思う。
私だけがずっとその時の気持ちを覚えてて、新しいリゼはどんな気持ちでそれを伝えてくれたのかを覚えていないなんて、
ずるいな、と思う。

木曜日=================

午前は頭痛とめまいがひどかった。花が伸びていた。邪魔なので切った。
後で思い出したけどこの行為は剪定、だ。
私にはいらないけど、リゼはもったいないと言って切った花を押し花にしていた。

朝、リィの部屋を見ると扉が開いていて、部屋の中の匂いが漏れ出ていた。
ひどい匂いだった。扉の隙間から中を覗くと、マリの遺体が喰い荒らされていた。
あんなに綺麗だったのに、と思ったけど、すぐにそれはリィのやったことだと分かって
なんとも言えない気持ちになった。
リィの怒鳴り声が頭痛にひびいて辛かった。

ケイトに声色で見抜かれて体調不良なことがみんなにわかってしまった。朝食は残した。ニコの紅茶があったかかった。ロージーが薬をくれた。
外に出られなくても屋敷の探検はできるのにリゼは私についてくれてた。
寝ていたらリゼに綺麗で天使みたいだと言われた。
おとぎばなしの登場人物に例えられ、なんだか自分は人間じゃ無いのかもしれないという気持ちが強くなってしまった。
リゼは私が人間じゃなくても友達でいてくれると言った。
もし本当に人間じゃないんだとしたら、私が呪われてるからこんな姿なんだとしたら、
お花が好きなリゼが隣にいてくれるなら、呪われたままでいいと思う。
薬を飲んだ後の眠気でぼんやりしながら喋っていたからあまりよく覚えていないかなと思ったけど
改めて思い返すと、結構覚えている。
そういえば、あのおとぎばなしが私の生まれた地域の古い伝説の話だっていうことは教えてない気がする。

先日ケイトにもらったレコードを四人で聞いてたら、雷が落ちて停電してしまった。
真っ暗な中ペネロペの悲鳴が聞こえてきて、リゼと二人で探しにいったら
いつのまにか全然知らない家の中にいた。
リゼと手を繋いでいたはずなのにはぐれてしまった。一人にされて急に心細くなった。
あの変な家で聞こえていた声は、ペネロペがかけられてきた罵倒なのだろうか?
自分に言われてるみたいですごく嫌だった。
私って捨てられたのかな?呪われてるから?
それに、リゼが棺桶に入れられていたのはなんで?
お母さんに呼ばれたと言っていた。
お母さんがそんなことをするの?
(ああ、でも私も自分の花を切り落としたりしてるから
リゼにとってはお花たちのお母さんに見える私ってひどい母親かも。)

あの家で見た袋の中もわからずじまいだ。

ペネロペは恐怖を感じるとこのようになることがある、のだろうか。
リゼは、彼女たちがもう怖がらなくて済むように、寂しく無いように
今日は夜もみんなで一緒にいようと提案していた。
だから、あのあとはみんなでペネロペのお部屋でディナーとティーパーティーをした。
ケイトも、ニコも、きてくれるかなと思っていたリィも、ロージーも
みんな一緒にいてくれた。
明るくてあたたかい時間だった。

夜はペネロペの部屋に泊まることになったので、一旦リゼが日記を書くために部屋に戻ると
朝作った押し花が完成していた。しおりにして持っておくらしい。
天蓋付きベッドになる予定のリゼのベッドを眺めたけど、私の使ってるベッドとよく似てるから
これからわかりやすくなるのは良いかもと思った。
魔術が失敗したらまた忘れてしまうから、そうなっても、
リゼの私物がちゃんとリゼのものだとわかるようになるのは良い事だ。

頭痛のことを言わなかったのは、これから記憶をとどめておけるかもしれないリゼの思い出に
嫌な気持ちになるものをあんまり残しておきたくなかったからなんだけど…。
リゼは嫌じゃないと言ってくれた。
でもなるべくなら、楽しいとか嬉しいとか幸せをもっと残してあげたい。

リゼは一週間と言わず、なにかと忘れっぽい傾向がある。気がする。
こんなことを考えたく無いけど
もっと、自分の言葉に責任を持ってほしい…。
私が彼女の言葉に救われてるのは本当なのに
まるでふわふわした雲みたいにつかみどころのない
その場の勢いでの気持ちなんだったら
とても、悲しい。
そんなことないって信じているけど、
まるで言い逃げみたいに感じてしまう自分もすごく嫌だ。

でも、こんなことを言っておきながら私だって自分の言葉に責任が持てるかと言うと…。
ペネロペにはずっと一緒にいると言ったけれど、手術を受けるならあと2年しか無い。
マリみたいに永遠になれれば、ずっと一緒でいられるのかな。

金曜日============

ペネロペの部屋で目を覚ました。そういえばそうだった。
良い天気なのに朝から体調は良くない。目も耳も変だ。でも頭痛みたいに見て分かるような体調不良じゃなくて良かった。リゼには内緒にした。
でもまだ続いてて辛いから今日はあんまり書けない。

起きたら部屋に居なかったケイトがニコのことを探してた。後でニコのことはリゼが庭にいた所を見つけてくれた。
リゼがニコを探している間、私はケイトのお手伝いをしていた。
いつも綺麗におろしている髪をブラシでといてあげた。
ケイトは、自分の決めた生き方をして、最期まで決めたいと言った。
大切な人が側に居てくれるだけで良いと言った。
私もそれが良いなと思った。
大切な人なんて今まで居なかったけど
今はリゼがそうなのかなあと思う。
何か言いたいけどうまくまとまらなくてまごまごしてたら
ケイトに話して楽になるなら話してみてほしいって言ってもらって
このノートの事をうっかり喋ってしまった。
ケイトは目が見えないからここに書かれたことを読む事はないけど…。

ずっとこんなことに意味があるのかなって思いながら続けてたから
ケイトが優しいと、偉いと言ってくれて
少しだけ楽になった。
私の心を大切に思うし、私自身に大切にして欲しいと言っていた。

ケイトはこれ以上無いほどの幸せを感じられたら、そのままずっと時間を止めたいらしい。
その時が来たら、ケイトは永遠になると言う。
私はお祝いしたいと思う。

幸せとは何か?
・紅茶がうまく淹れられた時
・ここに吐き出すことが何もない事
・大切な人が幸せなら、それで良いかも

ケイトとお昼の支度をしていたら、ニコを見つけたリゼが2人で帰ってきた。
私が身繕いしたケイトに、ニコはかわいいと声を掛けていた。
私も少し嬉しかった。

リィと話をした。私が気を遣えないこと言ってしまったから謝った続きでマリの話をした。
私の思ってる事を伝えたけど生きてて欲しかったって気持ちはやっぱり拭えないみたいだった。
リィは、ここのやつらは訳が分からないってお祈りはしてないけど
ペネロペと仲良しだし、マリのこと大好きだし、
月曜から来て今日までリィの優しい所をいっぱい見せてもらった。

リゼはここから出たいって言ってた。
私も連れて行って欲しいけどリゼやここにいる子以外の人に会うのは望んでない。
リゼが褒めてくれる花の事も、そのままの私のままでいていいなら愛したかった。
でもみんながみんなリゼみたいに優しい訳じゃない。だから外に出るのは怖い。
私の命を脅かすものじゃないなら…と言ってたけど
この変な体調が花のせいならやっぱり取るべきなのかな。
手術は受けなくて良いし、ここにいるだけでいいから
幸せに暮らしていけないのかな。

・小箱の中はずっとずっと昔にここから出たがってた子の手紙だった。
・そういえば小箱の事をきくのといっしょにいつもきいてた花の小瓶のことをリゼは口にしなくなった。解決したのかな?

土曜日===========================

やっぱり、私は人間じゃなかった。
命を奪って生きてる化け物だった。

リゼは一生懸命にこの花を取る方法がないか探してくれてる。
でも、そんなことしても意味がない。
私が生きるのに必要なものが変わるわけじゃない。
花がなくなったとしても
誰かを殺さないと私は生きていけない。

嫌な記憶だったから昔の事思い出したくなかった。だから記憶に蓋をした。
思い出した今でもやっぱり自分のことがおそろしい。

リゼは命を貰ってるのはご飯を食べてるのと同じようなものと言っていたけど
ケイトが自分の最後は自分で決めたいって言っていたように
私の都合で失われていいものじゃないと思う、人の命は…。
私が出逢った人たちみたいに、みんな大切な人がいたり、思い出を持ってる。私が知らない人でも。
私は、酷い事を言われて当然のことをして生きていたのだ。

リゼは昔初めて綺麗だって言ってくれた友達なんだと思う。
今は記憶喪失だけど、彼女も思い出したと言っていた。私に言葉をかけてくれたこと。
それにここに来てから会った時にも綺麗だって言ってくれた。
きっと心からの言葉だ。
リゼは今、この花にすごく怒ってるけど、
お花があっても、なくても、生き方を変えられないから…

それなら、綺麗って言ってくれた姿のまま
ずっと幸せになれたらいいのに。

昔、自分に咲いている花のことを調べたことがある。
東にある国の言葉で「永久の幸福」って意味があるのを知った。
その時はなんて皮肉なんだろうって思っていたけど
今なら、ちゃんと受け止められそうな気がする。

あの時に、リゼが幸せを連れてきてくれたから。

先生にききたいこと======================

今日は自分の事でいっぱいいっぱいだったからちゃんときけなかった。
もし会う機会があれば聞くこと

・病気を治療すれば、命を奪うことをしなくてもよくなるのか
・他の子供達はどんな病状で、どのような治療をするのか
・永遠になった子供を連れて行ってどうするのか

もし私がものすごい勘違いをしていて、
リゼの言うように、お花がなくなって、お花を育てる栄養になる命がいらなくなるんだったら、と思ったけど
月曜日からを生きるための命って 誰に貰えば良いの?
どうすればいいの?

日曜日===========================
(儀式をする為に赤い屋根の家に行く直前に書き残したもの。リゼの呪文が失敗した時のためにと思って…)

リゼへ

月曜日の新しいリゼは
私の事を覚えてないかもしれないから、はじめまして。
先週の月曜日から日曜日まで、あなたの友達だった 琴蕗イブキ です。

私の見た目は…写真がいくつか残っていると思うからそれと照らし合わせてほしいんだけれど、
黄色とかオレンジとかの花が咲いている人が私。
そういう病気だったから、ここに入院することになりました。

花を取るには手術が必要だけれど、
手術ができる18歳まで私は生きられない身体でした。
ずっと自分に咲いている花を好きになれなかったけど
あなたが綺麗と言ってくれたから、私は私の事を好きになれました。
リゼは、私が少しでも長く生きられるようにって
たくさんたくさん頑張ってくれました。
私の初めての友達。
たった数日だけだけど、あなたにはいっぱい愛してもらいました。

紅茶を美味しそうに飲むリゼ。
ダンスを踊ってつまずくリゼ。
お菓子作りで協力してくれるリゼ。
寂しい友達に寄り添うリゼ。
私のことを見つめるリゼ。
手を繋いでくれるリゼ。

他にもたくさん、私の大切な思い出には、あなたがいます。
あなたが隣に居てくれて、私は幸福でした。

私の友達になってくれて、ありがとう。
この言葉も何度口にしたか分からないくらい言ったと思うけど。
何度言っても足りないくらいです。

あなたのことが大好きな友達がいたこと、覚えておいてほしいな。

これからのあなたの毎日を、ずっと見守っています。
優しいリゼに、たくさんの幸福が訪れますように。

琴蕗イブキ

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